・・・ね、おれがお前を好きなこと、知ってる?










「とうちゃーくっ!」


本日は晴天なり。少しの日差しが心地良くて、おれはヴォルフラムを連れて外へと繰り出していた。
グレタと3人でよく来る、お気に入りの花畑。ここは眺めも綺麗で、空気も透き通ってる気がして、おれもヴォルフもグレタも、大好きな場所だ。
だけど、今日はヴォルフと二人っきり。理由はちゃんとある。
「・・・・それで。話って何なんだ、ユーリ?」
後ろでヴォルフラムが、ちょっと不思議そうな顔をしている。なんだか不満そうなご様子だ。
「はいはいっ、今日はすごく大事な話がありまーすっ」
気付けば、前に来たときよりも綺麗な花が増えていた。名前は分からないけれど、おれのとっても好きな花だ。
「話?それなら城ですれば良いだろう。今日はお前の誕生日なんだぞ?折角降誕祭が開かれているというのに・・・・」
その花を手折ることはせずに、そっと顔を近づけた。すごく良い匂い。ちょっと、ヴォルフの匂いと似てる。
「まぁまぁ、いいじゃん。ちょっとだけなんだからさ」
そう。今日はおれの誕生日。だからこそ、言っておかなければならない、大事な話があるんだ。
実を言うと、それは前から考えていた事で。
「・・・それなら早く言え。待たせるとギュンターがうるさいからなっ」
「なんだよ、そう急かすなよ」
でも、今更こんなこと言ったら、呆れられそうだな。おれがこんなに意気込んでいても。
おれはさりげなくヴォルフの手をとって、明かりの差すほうへと歩き出した。
ぽかぽかとした彼の体温がつないだ手から伝わってきて、何だか嬉しくなった。今までにこんな姿を見られて、「恋人同士みたい」と茶化されて必死に首を振ったことを思い出す。
何故か、あの頃からこいつと手をつなぐのは普通だった。全然、そんなの意識してなくて。それなのに、今はこんなにドキドキするのは何故だろう。
多分お互いに気付いている感情なんだろうけど、またお互い、なかなか素直になれなくて。
・・・だから今日、おれから言ってやる。ずっとずっと、秘密にしていた想いを。
「・・・・・ユーリ?」
おれが何時になっても話し出さないことに焦れたのか、ヴォルフはおれの顔を覗き込んできた。
自分では気付いていないのだろうが、上目遣いで見上げるその顔は、もう可愛いの域を越している、きっと。
おれは思い切ってその手を引き、小さな身体を自分の腕の中にすっぽりと収めた。
そのままぎゅっと抱きしめると、ヴォルフラムは驚いたように肩を強張らせる。
「・・・・・ねぇ」
半ばからかうようにして耳に唇を寄せた。彼の蜂蜜色の髪は襟足まで届く長さで、とっても弄くりやすい。いい匂いだし。
「なっ、なななんだ!いきなり!は、はっ離せ!!」
ちょっとぎゅってしただけなのに、それだけでヴォルフは顔を真っ赤にしてしまった。面白い。
このまま、おれがハメを外してしまったらこいつはどうなるんだろう。ちょっと見てみたい気もするけれど。
「・・・離せなんて。ヒドイなぁ」
おれから逃げようと身を捩るヴォルフを離すまいと、彼の背中に腕を回してさらに引き寄せてやった。すると、もう足掻いても無駄だと判断したのか、急におとなしくなる。
思えば、こうやって抱きしめたことも、こんなに近くでヴォルフの髪の匂いを嗅いだのも、初めてかもしれない。
白状してしまえば、こいつに出会った頃から、こうしたいと思っていたのだ。
「・・・・・・で。話って何なんだ、ユーリ」
おれがそんな物思いに耽っていたら、やけに顔が赤いヴォルフラムに突っ込まれた。
もう、折角このまんまゆっくりしたいと思ってたのに、何でそう急かすんだ、このわがままプーめ。
まぁ、そんなところも全部可愛いから、許す。おれってホントに甘い。
「・・・・なんだよ。もう今更言わなくたって分かるだろ」
爽やかな風が吹いて、ヴォルフの綺麗な髪と翠の瞳が揺らいだ。
「何のことだ?ぼくにはさっぱりだが」
ウソつけ。さっきまであんなに顔赤くしてただろお前。
天然なのか薄情なのか分からない。おれは可笑しくなってぷっと吹き出した。
「・・・まぁいいや。お前が気付いてくれるまで、このままで待ってる」
もう、言葉にしなくても分かるだろうから。無言で伝わるナントカってやつ。
おれはヴォルフの身体を抱きしめ直して、その頭に顔を埋めた。
「なっ、何だそれは!話があると言ったのはそっちだろうが!」
途端に、しおらしくなったと思った彼がじたばたと暴れ出す。ちょっとだけど、身長の差があって良かった。こういう時に便利なんだ。
「そうだけどー」
頭をぐりぐり撫でたまま、おれは周りを見渡した。
おれたち以外、誰もいない花畑。まるでおとぎ話の世界のように、とびっきりのシチュエーションだ。
やっぱり、言ってしまおうか。こんなチャンスを自ら逃してしまうなんて勿体無い。
今なら、サラリと言えそうだ、何だか。まるで長年連れ添ってきた仲みたいに。
「・・・・・・ねぇ、ヴォルフラム」
「なんだ?」
「今日は何の日?」
「ユーリの誕生日に決まっている」
ヴォルフラムが即答する。ぷくっと膨れたピンクの頬が可愛い。
「そう。・・・おれさ、前からこの日にしようって決めてたの」
「何をだ?」
首を傾げる頭を撫ぜる。こうする度に、愛しい気持ちが強くなる気がした。
「告白」
「・・・・は?」
にこっと笑うと、ヴォルフが翠の瞳をぱちくりと瞬かせた。まるで、鳩が豆鉄砲を食らったように。
その身体をふわっと包み込んでやる。そして、額と額をこつんと合わせて、じっとヴォルフラムを見つめた。
これでも、かなり余裕は無い。心臓がバクバク言っていて、今にも爆発してしまいそうな勢いだ。
「・・・・・言う。言うぞ、ヴォルフ。ちゃんと、耳の穴かっぽじって聞いてろよ」
「なっ・・・・・・」
更に頬を赤く染めながらも、ぎこちなく頷くヴォルフを見遣って、おれは深く深く深呼吸をした。



―――ここにいる全ての花の精よ、おれに味方してくれ。











「・・・・・大好き、ヴォルフ」













花との距離は0センチ。
史上最高の誕生日になるといいなと願いつつ、泣きそうに顔を歪めたヴォルフラムを再び強く抱きしめた。









back